選択を迫られる
この正月三が日で明らかになったのは、
蛍光の厚底を履けば必ず速く走れる、ということ。
もはや、それを履くか履かないか。
勝ちたければ履け。
かつて、足袋からゴム靴になったように、
靴の進化の転換点、生物で言えば突然変異に近い進化は、
過去幾度とあったのだろう、と。
だから、今回の厚底もそれらの一つに過ぎず、
これを真っ向から否定すれば、
「ゴム靴なんて邪道だ、足袋で走らんと!」
と言ってるのと同じこと。
いずれ他のメーカーもこの流れに追従し、
ランニングシューズの主流は、
衝撃吸収とそれに相反する高反発、そして姿勢移動をもたらすものへ。
そうなれば、どのメーカーの靴を履いても、
だいたい同じように速く走れるようになるんだろう。
だけど、今回は、その革命的な技術革新で一点突破した、
ニケのイノベーションがすごかった。
これは間違いない、本当に凄いこと。
だけど、一点だけ気になる点が。
これまでのシューズの改善点って、
例えば、
軽量化、足裏のグリップ、衝撃吸収力、靴紐などによるフィット感、
などの、言ってみれば、ランナーの持つ力を最大限発揮するための改良、
だったように思えるんだよね。
それがですよ、
今回のアレを履いた時には、間違いなく何もしてないのに、体が前に倒れたのよ。
前に倒れるから、また足を前に出す。
いや、何も履かなくったって、前に倒れれば勝手に足は前に出るけど、
普通は、そこで終わり。
だけどコイツは、前に出した足が着地すると、また前に倒れる。
これを繰り返すから、どんどん前に進む。
さらに、靴の反発力と相まって、どんどんスピードが出る。
これは、もはや自分の力ではない、そんな感覚。
実は、今回のこの靴は、こうした反発力を目指したというよりは、
脚への衝撃を和らげ、フルマラソンでも最後まで脚にダメージが来ないようにと、
厚底にしたらしい。
だから、フルでおかしな記録が出るのは、そうした衝撃吸収力のおかげ、というわけ。
それはわかる。
しかし、仮にその副産物として、
この、(あえて言おう)「推進力」が生まれてしまうことは、
どう説明するのだろう。
もし、靴そのものが推進力を発揮して良いのなら、
ソウルにバネを仕込もうが(実は30年近く前、スターレックスというメーカーが本当にやった)、カーボンパネルをリジット状(板バネ)に封入しようが、
なんでもありになりやしないか。
と、そんなことも考えたり。
靴の進化はすごいと思うし、邪道などというつもりもないが、
自力以上の推進力が得られる場合(例えば、追い風参考、下り坂だけのレースは非公認、等)は、今のところ公認記録にならないことを考えると、
これはどう扱うのか、と。
自分の足で着地してるし、その後蹴り出しているわけだから、
これを「自力以上の推進力」と言って良いものかも微妙。
で、どうするよ。
履くのか、履かないのか。
現時点なら、まだ履いても良いのだ。
3万出せば、もしかしたら福岡に出れちゃうかもしれんのだ。
いやいや、その3万が出せんのです。
(って、そこか!)